※ネタバレを含みます。
観終わったあと、頭がいっぱいになってくらくらした。
する予定だった買い物もそこそこに、帰宅して感想を書き留めなければと思った。
思いつくままに書いていくので、レポは求めないでください。感想です。
「性はグラデーションである」という言葉を、大学で受けたジェンダーに関する授業で聞いたことがある。
まさにその通りな登場人物たち。
もともとはノンケだったようだけどリンコに恋をした結果としてゲイということになったマキオ。
(マキオとしては男性として男性を好きになったわけじゃなくて、女性であるリンコを好きになったのだから、ゲイと呼ぶのが果たして適切なのかどうかはわからない。)
女の子になりたい願望があるわけではないけど男の子を好きになったカイ。
リンコのおしとやかさとは裏腹に、ガサツな女の子・佑香。
「普通」って何?
カイが母親に問いかける言葉は、劇場全体に問いかけられていた。
この映画を観た人は、みんな優しい気持ちになるんじゃないかなって思った。
最初は「異常」であるリンコに戸惑っていたトモの心が解けていったように、普段はLGBTの人たちのことを「異常」だと思っていた人たちも、考え方が変わったんじゃないかなって、期待したくなる映画だった。
生田斗真はお箸の持ち方も、しゃがんで何かをするときの足の揃え方も、完全に「女性」を超えていた。
以前なにかのインタビューで「トランスジェンダーの人は体が男性なので少しでも女性に見えるように、より女性らしい仕草に気を遣う」のだと言っていた気がする。
本当にその通りで、話し方、仕草、やることなすこと全て、私よりもよっぽど「女性」らしくって、驚いた。
スーパーだって順番に効率よく回るし。
「洗剤忘れちゃった。トモ、取ってきて」って取りに行かせるってことは、戻る気がないってことかなと。
スーパーを効率よく進む順番まで決めている、家庭的な人なんだなって思った。
私は行ったり来たりで本当に無駄が多いので。
半年前にビジュアル系バンドのヴァンパイアを演じていた人とは思えない……
(VBB(※)で共演していた小池栄子が出てきたときは舞台を思い出してちょっと笑いそうになってしまった)
リンコのお母さんがリンコのことを受け入れていて、女性として生きることを応援してあげていたのにはホッとした。
カイくんの家は母親がLGBTを「異常」というので息子が言い出せず、自殺未遂だもんね……
カイくんにとってリンコはとても心強い味方だっただろうなと思う。
学ランを着たリンタロウは、母親の「リンちゃん、女の子だもんね」って言葉がどれだけ嬉しかっただろうなと思った。
でも、リンコの父親が出てこない。
母親と一緒に出てくるのは義父。
父親についての描写はなかったように思うけど(あったのかな)、父親は出て行っちゃったのかな……
編み物は、お母さんが教えてくれたんだね。
お母さんが編み物でおっぱいを作ってくれたのに対して、リンコは性別適合手術の供養として編みチンを作って燃やす。
燃やしたら戸籍を女性にして、マキオと結婚する。
編み物がリンコを一歩ずつ女性として生きることに近づけていく儀式のようだった。
最初はリンコの姿に驚く周囲の人間とも、一針一針編み進めていくように少しずつ関係を深めてきたのかなと。
職場でいじめられたり、入居者のお年寄りに嫌がられる描写がなくて、本当にほっとした。
みんなリンコのこと好きなんだなって思った。
リンコは編み物について、「嫌なことがあっても悔しいことがあっても、こうしているとスーッと心が平らになるの」と言った。(セリフはニュアンスだけど)
私もわかるよ~~~。
スワロフスキーデコや粘土、レジン、刺繍…ハンドメイドが大好きな私も、作っているときは「くそー!」とか「あーもう、あの時なんであんなこと…」とか思いながら作業をしている。
でも、それが出来上がりに近づくにつれてわくわく楽しい気持ちになって、出来上がったら「よし!できた!」って明るい気持ちになる。
平らではないかもしれないけど、気持ちの整理ができるというか。
同じ気持ちの人がいるんだなって思った。役だけど。笑
最初はマキオとリンコが並べた布団の足元に、横向きに寝ていたトモが、心を許してからは川の字で寝るようになるところもよかった。
でもトモを間に挟んだ川の字じゃなくて、マキオ・リンコ・トモの順。
こいのぼりの順になっていたのかなって思う。
お弁当も、トモが初めて来た日の翌日のお弁当はタコさんウインナー(1匹)だったけど、お花見のシーンではこいのぼり(3匹)のソーセージになっていた。
家族のような関係になったってことかなって思ったけど、終盤でリンコが見つめるのは遠くのこいのぼり。
せつない。
いま私の身近にLGBTの人はいないように思うけど、高校生のころにはFtMの友人がいたり、成人式で元同級生が男性になっていたりしたから、知らないだけで、色んなところで起こっていることなんだろうなって思う。
たくさんの人に見てほしい映画だなあ。
「異常」とか「気持ち悪い」って思っている人は、この作品を見るために映画館に足を運ばないだろうから、早く地上波で放送されて、自分の性に悩んでいる子供やその親たち、クラスメイトをオカマオカマってからかっている子供たち、LGBTを「異常」だと思っている人たち、学校の先生、ほかにもたくさんの人たちの目に留まってほしい。
観終わったあとにパンフレットを買いに行ったら、完売になっていてとても残念でした。
でも、それだけこの映画のパンフレットを手元に残したいって人が多かったんだろうなって思うと、あたたかい気持ちになった。
※VBB
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