これは厄介だっていう説もあるけど

すきなものについて雑多に語るブログです

髙木雄也くん主演舞台『裏切りの街』を前々日にチケット取って観に行った


4月1日、Twitterのスペースで髙木担の友人から舞台『裏切りの街』東京公演の感想を聞く会をしておりました。

登場人物が嘘つきの裏切り者ばかり、クズだらけ、という話を聞いているうちに「私これたぶんめっちゃ好きだな?」と思い、そのスペースの最中にローチケにログインし、4月3日大阪の大千秋楽のチケットがまだあったので急遽購入!

さきほど行ってきました。

 

 

めーーーーーーっちゃおもしろかった!!

 

とりあえず、あらすじ。

 

無気力なフリーター、菅原裕一(髙木雄也)と平凡な専業主婦、橋本智子(奥貫薫)。菅原には長年つきあっている 彼女がいて、智子には結婚している夫がいる。その二人が出会い系サイトで知り合い、出会い、恋愛をし、逢引を繰り返す。二人はお互いに何かを求めるわけでもなく、この恋愛に発展性がないこともわかっている。お互い、大切だと思えるパートナーがいるにもかかわらず、「浮気」を繰り返す。会っている意味など考えず、「裏切る」という行為の罪悪感に苛まれることもなく、惰性ともいえる二人の関係は続いていく。そして、家に帰れば、お互いのパートナーに対して、別の愛情表現をする。それを壊す勇気などない。この先、自分はどうしたいのか。そんなことは考えない(ふりをした)まま、ただただ日常生活をこなしていく…。

――公式サイトより引用

 

stage.parco.jp

 

 

感想いきます。(早く書きたい、急いで帰ってきた)

あやふやなところあるかも……

流れは入れ違いも多々ありそうです。

 

 

先に言っておきますが、私は「嘘」「裏切り」「クズ」のテーマが大好きなので、それに偏った感想になっています。

この作品で不快感を覚えた人は読まない方が良いです。

 

 

開演すると、舞台上にスマホの画面が出て来て、「カトウ」のマッチングアプリの画面が表示される。スマホの画面の演出すごく好き。

カトウは「いいね」と「×」を繰り返しスワイプし続けて、そのうちの一人と会うことになる。その相手が吉祥寺在住・30歳の「トモ」。

カトウ、無料体験の回数内でメッセージを完結させるところが最高にセコイ。

 

カトウは本名・菅原裕一といい、東中野にある彼女の小汚い家でヒモ状態。彼女から毎日2000円もらって生活している。バイトはしているはずだけどブッチし続け、母親には体調不良のフリ。

本物の髙木くんの「キレイなお兄さん」は面影もないほど髪はボサボサでヒゲも生えている。喋り方も常に半笑いで不気味。

 

二人は中間地点の荻窪で待ち合わせ。なんかチョイスが絶妙な感じがある。

会ってみると、「トモ」は42歳で既婚者だとわかる。それに安心して自分も彼女がいることを告げる裕一。

裕一は「実は早く到着していて、顔見てブスなら帰ろうと思ってた」とか「この服気に入ってるから半乾きだけど着てきた」とか、いちいち、それは言わなくていーだろ!ってことを言う。

不快感極まりないのだけど、トモとはテレビ番組の話で盛り上がり、そのあとも会うことになる。

ヒルナンデス、ミヤネ屋って見てたら夕方のドラマの再放送になる」「だいたい相棒ですけどね」「夕方になると、一日が終わるって焦る」がリアル。(もうちょっとほかの番組名言ってたな)

 

なんでこんな気持ち悪い男のことを気に入ったんだろう?と見ていると、その理由は智子宅のシーンで察することができました。

夫はエリートで優しそうな男なのですが、それがいやに押しつけがましい。何事も「大丈夫?」「大丈夫?」と聞いて、途中からギャグかと思うほど。智子はそんな夫に対してずっと敬語で話し、「大丈夫です」と答え続ける。

 

夫は、智子をやけに気にかけたり、温泉旅行を提案したりするんですけど、あんまり興味ないんだろうなって思った。

 

智子は裕一との待ち合わせに赤いワンピースを着てくるのですが、クリーニングに出しっぱなしだったと言う。

たしか11月に夫がプレゼントしたんだったかな?そして裕一に初めて会ったのが夏。その帰宅後、ハンガーにかけているワンピースを見て夫は「プレゼントしてから1回くらいしか着なかったよね、めずらしい」と問いかける。

 

一張羅として着ていったけど、好みではなかったんでしょうね。だって智子はいつも茶色とか黒とか落ち着いた色の服を好んで着ているようでしたから。夫は智子の服の好みなんてお構いなしのプレゼントを贈ったということです。

そして温泉旅行。夫の提案に「大丈夫です」と言うばかりで行きたくはなさそうなのに話を進める。

智子が見ている番組を気にすることもなくテレビのチャンネルを変える。智子の好きなものになんて、興味がないんですよね。

 

だから智子は、同じテレビを楽しめる裕一に安心したんじゃないかなと思う。離れた家で二人が同じテレビを見ている描写が良かった。

そして、途中で智子は妹から「プライドが高い」と言われていたので、自分より下っぽい裕一と一緒にいると安心できたのだろうなと。そう思っていたら終盤で「ダメ人間」と言い合う二人が描かれており、やっぱりな、と思った。

 

3回目のデートは西荻窪。なんか微妙に場所が変わったな、と思ってたら「荻窪にはラブホがないが西荻窪にはある」という理由だった。

でも自信のない裕一は自分から誘えないので、分かれ道で「あっちは飲食店、こっちはラブホがあるみたいっすよ。どうします?」みたいな聞き方をする。このやり取りがまた結構長い。「どうしよっか」の応酬の末、二人とも笑いだしてお互いに「最初からそのつもりでした!」となる。行くって決まったあとの「イエ~イ!」がかわいかった。清々しいダメ人間たちだ。

裕一のこういう優柔不断なところも、勝手に決めてしまう夫とは対照的だなと思う。裕一は絶対に自分で決めない。

 

ちなみに智子の夫は、お金を無心してきた妹に対して智子が「200万なんて無理!」と断るのに、了承もなく「振り込むよ」とOKを出す場面もあった。本当に、智子の意見なんて聞いてるようで聞いていない。

妹にお金が必要な理由は、地元で母の面倒を見ていて、このたび結婚することになり、相手に借金があるという理由で金を借りに来たのでした。

「うちも大変なのよ」「この服だってユニクロよ」と自虐する智子に対して、別れ際に「こっちはGUでこっちはしまむらよ!」とかましたカウンターが、価格帯にリアリティがあって最高に冴えていた……

 

そしてベッドシーンが何度かあるんですが、目の前にいた他ステっぽい髙木担が暗転中から双眼鏡を構えるので目安にして、私もめちゃくちゃ双眼鏡覗いた。(友達から絶対に双眼鏡は持っていけとアドバイスをもらった)

Twitterで「アキラ100%のほうが隠れてる」と見たけど、まさにその通りだった。

 

浮気・不倫となった二人は、「罪悪感が…」「でもどうでもよくなったかも」「いやでもやっぱ罪悪感が…」とループするも、結局何度も会う間柄に。

智子は夫に「田辺さんと会う」と偽り、裕一は「伸二と飲みに行く」と嘘をつき、嫌々呼び出された風や体調悪い風を装って、逢瀬を繰り返す。

 

その結果、智子が妊娠。裕一は景色がぼやけるほど焦る。(この描写は歪んだ景色の映像がプロジェクションマッピング的に映し出されていて、すごいなと思った)

その割には「僕がつけなかったりしたから…」などと言っており、こいつ本当のダメ人間だな!と思う。

対して智子はあっけらかんとしており、「夫の子だったら産まなきゃいけないから、あなたの子でよかった。堕ろせば済むから」と缶コーヒーをすすり、お寿司か焼肉食べに行こうと誘う。缶コーヒーと選択肢のお寿司から本当にどうでもいいと思っているのがにじみ出ている。

 

バレないうちに堕ろしちゃおう、となった二人ですが、結局、智子は夫に裕一からのSMSを見られてバレ、裕一は友達の伸二(浮気のアリバイ工作に利用していた)が彼女にこぼしてしまってバレてしまう。

修羅場だ~!盛り上がってまいりました!

 

同時に、智子が妊娠していることも隠していた母子手帳が見つかって夫にバレる。でも、夫は不倫を深く追求せず「オレの子?」「産んでくれるよね?」と笑顔で詰め寄る。こわい。智子も「産みます」というしかない。息が詰まる瞬間。(良いスリルだ)

 

浮気・不倫がバレた二人ですが、その後、夫の不倫と、彼女里美&友人伸二の浮気も明るみに出ます。

いいぞ~!!見事にどいつもこいつも裏切り者だ!!

 

夫は「会社の田村くんが…」と偽って不倫を繰り返していたのですが、智子に怪しまれたことを機に会社の部下「田村くん」を家に招くこと2回。

2回目で、その「田村くん」は「斎藤くん」であることが、呼びかけるセリフと、画面上のメッセージの映像で暴露される。

このことは既に友人から聞かされており、「なんだそれ最高やん!」と思っていたので「来るぞ来るぞ~!」と楽しみました。知らなかったら知らないですごくおもしろかったと思う。どっちも良い。

 

そして彼女里美&友人伸二。

一度、裕一が「伸二と飲みに行ってた」と嘘をつくとあからさまに里美が動揺する場面があったのですが、そこではきっと「なんで私が会ってたのにそんな嘘つくの?」とバレたんでしょうね。いいですね。

その後、伸二が口を滑らせて里美に浮気がバレ、裕一はそれを責められるものだと思って「なんか言うことあるでしょ?」と聞くと(そういうところも自分から言わないのが卑怯なんだな~)、自分の浮気を問い詰められていると勘違いした里美が白状してしまう。

二人とも相手の浮気を責められる立場ではないので「もうしないって約束しよ」とゆるく解決。

のちに三人での話し合いの場がもたれるも、仕事をしている彼女や伸二に比べて裕一は立場が弱すぎる&自信がなさすぎるので、ヘラヘラ笑ってゆるく終了。

ちなみに伸二はUberをしているのですが、いろんな場面でちょいちょい「あ、注文入った」と言うのがなんかおもしろいなと思っていたら、このシーンでも注文が入り、「また王将だ。みんなどんだけ餃子好きなんだよ」とぼやいて、この作品で唯一笑いが起きた。

 

伸二と里美のLINE画面もスクリーンに映し出される。

「体調悪いフリしてみた」「不機嫌なフリした」「余裕(笑)」

裕一と里美のカップルは、二人とも同じ手口で浮気を誤魔化していたのでした。

最高にお似合いだ!

 

そして、智子夫に呼び出される裕一。いつからの関係だと聞かれて、「1ヶ月」と嘘をつく。「じゃあ君の子じゃないね、3か月だから」と納得する夫。でも、本当に納得しているかはわからない。たぶん「納得できたと装える都合のいい答え」なら、嘘でもなんでもよかったのでは?と思う。

そして、同僚や妹に智子が妊娠したことを話して外堀を埋めていく感じ、すごく嫌な人だな~と思った。でも「喜んで」伝えるので、周りはいい夫だと思っている。

これは私の想像ですが、この夫のほうが不妊だったのではないか?(単純に運がなかった可能性もあるけど)

「いい夫」から「いい父親」になりたかった。だけど子どもができないまま妻は42歳。周りに出産祝いを渡すときに悔しそうですよ、という田村(斎藤)の言葉は本当だったのでは?

それが突然妻が妊娠した。この際、子どもの本当の父親が誰であっても、自分が「いい父親」になり「幸せな家庭」を築くことができれば、それでよかったのでは?だから智子の意向なんて気にせず「産む」以外の選択肢を潰しにかかったのでは?

と考えて、この夫まじでこわいな~~~~と震えあがる気持ちでした。(いいぞいいぞ!)

 

そして夫も不倫相手がいることがここで裕一に明かされる。夫も「妻のことは大切だけど、不倫相手と会ってるときは結婚なんてしなきゃよかったと思う」みたいなことを言う。

「本当のことってのはな、たくさんあるんだよ。ひとつじゃないんだよ」というセリフが良かったですね…

私は『真実はいつもひとつ』のジャンルの住人ですが、人の心だけはそうではないと思うので。犯人やトリックはひとつでも(話が逸れた)、人の心だけはきっちり筋が通っているわけではないと思う。

浮気や不倫をしてやましい気持ち、本命の相手がきちんと好きだという気持ち、でもめんどくせーという気持ち、全部があるよねって思う。あと「やましいと思わなくては倫理的によくない」という気持ち。

前半で、裕一と智子もそのループにはまっていました。

 

そうそう。金を無心しに来た妹は後日「半分だけど」としっかり100万返しに来ます。(そこで妊娠したんでしょ、旦那さんから聞いたよって話になる)

借金返済のために夜の仕事を始めたということで、本人は「ベッタベタでしょ」と自嘲しますが、この妹だけが人格者だったのではないかなと思います。

親の面倒を見て、金は借りるけどきちんと返す。登場人物の中で唯一まともな人間。妹だけが東京の外に住んでいる。この「街」の住人じゃないんですよね。

田村(斎藤)、あいつはだめだ。「奥さんに嘘ついてていいんすかw」みたいな態度なので、「街」の住人だ。

 

さて、夫からもう会わないように釘を刺された智子と裕一ですが、結局4か月後にまた会うのが最後のシーン。

いつもの待ち合わせ場所に現れた智子は、夫の子ではないと言い出せずお腹が大きくなっていますが、赤いコートを着ています。季節は違えど、初対面のときと同じ色。未練タラタラだ。

駅前?で座って話すも話が続かず、もう帰ろうか、やっぱもうちょっと…というやり取りを繰り返す二人。

「そういえば、名前知りませんでしたね」「名前とか、よくないですか?」みたいな会話がダメ人間二人の関係性を表していてすごくいい。裕一のスマホに登録されてる智子の連絡先なんて「おばさん」ですからね。

前半に書いた「ダメ人間だから安心した」という話はここで交わされます。わかるな。

私も性格の悪さを隠さない人が好きだ。あまりにいい人だと、こわい。自分が性格悪いから、相手も悪いと「私だけ性格悪いわけじゃないな、よかった~」と思う。

 

二人は何度も帰ろう、話そう、とやり取りした結果、別れられることができず「じゃあ、行きましょっか!」でエンディングの音楽が鳴る。その後味の清々しいこと。

 

ひとつかわいそうなことがあるとすれば、智子のお腹の子ですね。

戸籍上の父親からは「いい父親」演出の道具とされ(私の想像ですが)、母親は「本当の父親」と不倫を重ねたまま、産まれて育てられることになる。最悪だな。

 

全てにモラルがなくて、すごく楽しめました。

本当の話だったら倫理観がなさ過ぎて問題なことばかりですが、だってこの物語は、嘘の話なんですから。