これは厄介だっていう説もあるけど

すきなものについて雑多に語るブログです

関ジャニ∞と過ごす令和4年、夏(+無職エッセイ本の告知)


18祭の話をする前に……

急にガチガチの文体でしゃべり出したらおかしいので、先に告知で失礼しますね!

 

9月25日の文学フリマ大阪で、今年3月~現在までの無職期間にエンジョイしてきたことをまとめたエッセイ本『華のお暇』を出品します。

第十回文学フリマ大阪(2022/09/25) | 文学フリマ

ブース番号も決まりました!

I-42 (2F B・Cホール)です。

 

本は同日からBOOTHでも通販予定です。

ページ数:168ページ(約62,000文字)
値段:600円+送料

 

dressofsindy.booth.pm

 

目次は仮ですがこんな内容です。
いまコナン熱がすごいので、だいたいコナンの話をしています。

 

・まえがき …………6
・ 劇場版名探偵コナン『ハロウィンの花嫁』世界最速上映 …………8
・ コナン聖地巡礼の東京旅行 …………12
・ 怪盗キッドが盗んだ宝石ぜんぶ見る …………23
・ ブックホテルに泊まる …………28
・ 「三河湾にある佐久島だ!」に行く …………37
・ 探偵事務所の面接を受ける …………57
・ 『芦屋のヒマワリ』を見に行く …………71
・ 同人誌を作る …………77
・ 同人誌を頒布する 〜通販編〜 …………84
・ 同人誌を頒布する 〜イベント編〜 …………87
・ プラネタリウムを目指し、岡山へ …………91
・ 鳥取でコナン尽くしの旅 …………97
・ 関ジャニ∞と過ごす令和四年、夏 ~18祭~ …………108
・ 働かざるものが食べたおやつ …………131
・ 書を読んで、家にいよう …………144
・ エンタメとイベントとそのほかの趣味と …………155
・ あとがき …………166

 

この中から試し読みとして、

関ジャニ∞と過ごす令和四年、夏 ~18祭~

を掲載しておきます。

ちなみに旅行ブログのほうでは「『三河湾にある佐久島だ!』に行く」を掲載しているので、ご興味があればどうぞ。旅行ブログはこちらをクリック

 

まだ下書き段階なので、多少の変更は出ると思いますが、遅くなってしまった18祭レポも兼ねて。

もちろん本とか関係なく楽しんでいただくのも大歓迎です!

 

 

では、本文どうぞ。(漢数字になってたりなってなかったりは最終段階で調整予定です)

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 七月中旬、私は激しく苦しんでいた。ツイッターを見ることができないのである。

 なぜかと言うと、三度目となる関ジャニ∞のスタジアムライブは、神奈川の日産スタジアム公演が七月十六日と十七日。大阪のヤンマースタジアム長居公演は七月二十三日と二十四日。私は大阪公演のチケットだけを取っていた。つまり、日産公演のネタバレを是が非でも避けたかったのだ。

 ネタバレを避けるべく、私はツイッターでフォローしているジャニオタ友達全員をミュートし、トレンドでもネタバレを踏まないよう地域をアイスランドに設定し、訪れた実家でワイドショーが流れた時には別室へ逃げ込み、とにかくありとあらゆる情報を遮断した。

 一週間。これはツイッターに常駐して友人たちが推しに狂う様子を見るのを日々楽しんでいるおたくにはあまりにも長い時間だった。

 それでも耐えたのは、初見の感動を得たかったから。なにしろ今回は曲投票があった。

「踊! SONG」と「レア! SONG」だ。ちなみに前者は「おどソング」と読む。

 ファンクラブ内でダンスナンバーと披露されることがレアな曲の投票を募り、それぞれの一位に輝いた曲が本番で披露されるとのことだった。

 絶対絶対絶対絶対、初見で「わあ!」という気持ちを味わいたい企画!

 私が投票したのは以下の通りである。

 

 ◆ 踊! SONG

 一位『マーメイド』、二位『Black of Night』、三位『Masterpiece』

 

 ◆ レア! SONG

 一位『ルラリラ』、二位『Dive』、三位『口笛の向こう』

 全ての情報を遮断し、ジャニオタのツイートが読みたいよお、と嘆きながら耐え抜いた一週間後、ようやく大阪公演の日がやってきた。

 

 信じられないことに快晴。

 これが三度目のスタジアムライブだが、一度目も二度目も私が行った公演は雨だった。

 初めて晴天の下で関ジャニ∞のスタジアムライブを見られるなんて感動!

 友人と合流し、座席へ向かう。

 今回のチケットは一般発売で取ったものなので良席は期待していなかった。その予想通り、案内に従って進む先は、すり鉢状になったスタジアムの上の方だ。

 上がっても、上がっても、上がっても、自分たちの列は見つからない。

 まさか、最上段なのでは……?

 そんな予想も見事に当たり、メインステージのほぼ正面、最上段最後尾に自分たちの座席番号を見つけた。

 普通であれば「もっと近くで見たかったな~!」という気持ちも湧いてきそうだが、このときばかりは別だった。

 さえぎるもののない青空。広々としたスタジアム。期待をふくらませた全ての観客の向こう側に、関ジャニ∞が出てくるステージ。さらにその奥には、あべのハルカスまでもが見えた。

 端的に言って、絶景。

 深呼吸をすれば、会場全体がまとっている幸福感や、晴れ渡った青空と隣接する公園の緑から湧きだす夏の空気を、すべて吸い込んでしまえそうな気分になる。

 スタジアムライブの醍醐味を存分に味わい尽くせそうな座席について、私は友人に頼んだ。

「ネタバレ黙ってて欲しいから、最近ハマってるグループの話をしてほしい」

 日産公演にも参戦した友人は今、あるグループに夢中である。久しぶりに会えた友人と話したいがネタバレを聞くわけにもいかない。彼女は待ってましたと言わんばかりに、たくさん話をしてくれた。

 そんな中、会場に「エイト! エイト!」というコールが沸き起こる。コロナ禍で大声を上げることは許されていないため、普段であれば観客が行うこのコールを、今回は関西Jr.が担当してくれていた。

 ありがとうなぁ、と思いつつ、首を傾げた。

 時間は十七時二十八分ごろ。

 私は、悠長に水を飲んで「これ開演まで三十分続くん?」と不思議な気持ちに駆られていた。

 十八時開演だと思っていたのだ。正確には十七時半開演だった。

 そのことを教えてもらった私は大急ぎで水や荷物を片付け、双眼鏡とペンライトを取り出し、開演に備えた。

 オープニングは、朝起きて会場へ向かい、設営を担う関ジャニ∞という設定で作られた映像から始まった。

 このライブの数日前に、目黒蓮君が土木作業員に扮しニッカポッカを履いたアイドル雑誌DueTの表紙を見て、「関ジャニ∞もこんなカッコしてほしい~!」と喚いていた私の願いは、早々に叶った。

 映像が終わると、ステージの上……舞台上ではなく空間的に上、屋根にあたる位置から関ジャニ∞が現れた。

 この会場で一番遠いと思っていた座席だったが、そのときだけは彼らと目線が同じで面白かった。

 丸山君の挨拶を皮切りに、ライブがスタート。

 ちなみに翌日の公演ではステージ真横だったため屋根の上は機材に隠れて一切見えず、ライブが開演してしばらくしないと関ジャニ∞の姿が見えないのも、それはそれで面白かった。

 アップテンポな『無責任ヒーロー』『あおっぱな』『青春ハードパンチャー』『がむしゃら行進曲』『前向きスクリーム』『T.W.L』『CIRCLE』が休むことなく繰り出される。

 楽しい! 楽しい! 楽しい!

 語彙のないドリカムみたいな感想しか出ないタイム。

 言葉を尽くして楽しさを語りたいところではあるけれど、本当に「楽しい」しか言えないんですよ。

 トロッコで広いスタジアムをぐるりと回った関ジャニ∞がステージの奥へ戻ると、メインモニターに3Dイラストの関ジャニ∞のキャラクターが映し出される。

 嵐のアラフェスをパクった、いや、リスペクトした、ハチフェスの始まりだ。

 ピンクの衣装に身を包んだ関ジャニ∞が現れ、「もっと」と聞こえた瞬間、私はヒィッと上げかけた悲鳴を押し殺したが、殺しきれなかった声が漏れて、マスクの上から慌てて口を手で覆った。

 なにわ男子の『初心LOVE』!

 そりゃジャニーズメドレーをするとなればこの曲は避けて通れない。そんなことは当然なのだが、それでも初心LOVEを大真面目に(←だいじ)歌いきる関ジャニ∞は、それはそれは見事なジャニーズアイドルだった。

 翌日の公演では「サイドモニターに謎の絵文字が舞ってるから見て」と言われて結構楽しみにしていたのに、それでも初心LOVEを歌って踊る関ジャニ∞に釘付けで、結局謎の絵文字を確認することはできなかった。早くDVDで見たい。

 怒涛のジャニーズメドレーは続く。『マスカラ』『D.D.』ではかっこよくダンスを披露し、丸山君と安田君の『Anniversary』ではモニターに手書き風フォントのメッセージが映し出された。「いつもありがとう」みたいな文面だったのでファンに向けての演出なのかなと思ったら、互いに向けてのメッセージだったようで、「この少クラ(※ジャニーズJr.がたくさん出る番組)のお手紙コーナーみたいな演出は一体なに……?」と思っている間に曲は終わった。笑っていいのか真剣なのかわからないところがまた、じわじわと来た。

 続いて、横山君が一言キメるだけの『Sexy Zone』は、登場の仕方こそおふざけっぽかったものの、王子様衣装を着て画面に薔薇の花を散らせる演出があまりにも美麗だった。

 メドレーはまだまだ続く。ボイパも頑張る『Real Face #2』、染み付いた振付が蘇る『ファンタスティポ』、なにわ男子が「西のカワイイ」なら「東のカワイイ」の権化であるHey! Say! JUMPの『キミアトラクション』……そして、狂気の『スシ食いねェ!』

 カウントダウンコンサートでも大定番の『スシ食いねェ!』だが、ただの定番で終わらせないのが関ジャニ∞だ。

 なんと、ステージ上に寿司屋のカウンターが出現し、歌詞に合わせて並べられる寿司を片っ端から丸山君が頬張ってゆく。

 口から溢れ出しそうになりながら寿司を突っ込んでいく丸山君には、笑いというよりも「喉詰めなや……」という心配が勝ってしまった。翌日の公演では、吐き出すのではないかと思った。体を張りすぎだ。

 この曲のあと、私はめちゃくちゃにテンションが上がった。

 ――『買い物ブギー』やん!

 関ジャニ∞がJr.のころに歌っていたあの曲だ。と思ったら、『Hey Hey おおきに毎度あり』だった。えらいすんませんでした。

 友人からは「『買い物ブギー』はジャニーズメドレーに入らないよ」と当たり前のことを教えてもらった。この二曲と『たよりにしてまっせ』と『日本よいとこ摩訶不思議』は私の中で同じジャンルにいる。

 続いて、本人たちよりも関ジャニ∞の方が着た回数が多いのではと噂されるスケスケ衣装で『A・RA・SHI』、しっかりとジャニーズアイドルっぷりを魅せつける『シンデレラガール』、オチに『ええじゃないか』と来て、ジャニーズメドレーは幕を閉じた。

 その後のJr.コーナーでは、関西文化を煮詰めたような『はちゃめちゃ音頭』と、聞き馴染みのある『関西アイランド』が披露された。

 完全に余談だが、いつ聴いても「エンタテインメント いらっしゃいな」というサビの歌詞が「エンタテインメントになっちゃいな」に聞こえて、違うとわかっていてもなお「めちゃくちゃ明るい『お前も蝋人形にしてやろうか』みたいだな」と思ってしまう。

 バックステージに現れた関ジャニ∞が次に繰り出したのは『罪と夏』!

 最上段にいる私たちの高さをも優に超える噴水が会場の至るところで何度も上がり、噴水近くの観客はズブ濡れとなっていた。

 ここからは『Dear Summer 様!!』『クラゲ』『オモイダマ』と夏の曲が続き、MCへ突入。

 その後、いよいよ投票結果の発表となった。

 あまりにバカな私は、この時間には「楽しい!」という感情だけに脳内を占拠され、投票企画のことをすっかり忘れていた。

 どれくらい忘れていたかというと、『踊! SONG』の十位から二位までが発表されても、自分の選んだ曲を思い出せない有様だった。

 ――こりゃ『ルラリラ』が一位もろたわ!

 ページを遡っていただいたらお分かりだろうが、私が『ルラリラ』を選んだのは『レア! SONG』のほうである。それくらい記憶がなかった。

 そんな私の耳に届いたのは、ぽこ、ぽこ、という水泡がはじけるような音だった。

 たったのそれだけで、繰り返し繰り返し聴いていた曲の導入だとすぐにわかった。

『マーメイド』だ。

『マーメイド』が、観られるのだ。

 ――と言われても関ジャニ∞のことを知らない方々にはこの感動が伝わらないので早口で説明を入れさせていただく。

 

 この曲が初めて披露されたのは二〇〇二年の夏。現在三十三歳の私が中学二年生で、関ジャニ∞がまだ関ジャニ∞ではなかったころの話。

 キャパ約一〇〇〇人、つまり五万人収容のヤンマースタジアム長居のたった五十分の一の会場・大阪松竹座で歌われていた曲だ。大倉君がメンバーに加わって関ジャニ∞が結成されたのは、その数か月後の十二月だった。

 私はこの舞台へ行くことができなかった。単純に、情報収集力も財力もなく行きそびれてしまったのだ。関西ローカルの深夜番組で放送された映像をVHS(DVDですらないことに時代を感じてほしい)に録画して、何度も何度も見続けるだけでは飽き足らず、CD化もされていないその曲をテレビから繋いだコードでMD(時代!)に録音し、ガッサガサな音質のまま何年も持ち歩いた。

 高校二年生となった二〇〇五年夏。

 ようやく友人にチケットを取ってもらって初めて関ジャニ∞のライブに行けることになり、しかもアリーナ最前列という幸福のさなか、悲劇が襲った。

 内博貴の活動休止。

『マーメイド』のメインボーカルは、内博貴渋谷すばる錦戸亮だった。そして私は内担だった。そのライブ内でも『マーメイド』は披露されたものの、自担の声がないその曲を複雑な気持ちで聴いたのだった。

 大学に上がり、関ジャニ∞から離れて少しした二〇〇九年にも披露されたらしいが、私はそのライブにいなかった。

 そしてさらに時を経て二〇二〇年のコロナ禍。

 松竹座からの無観客配信ライブで久しぶりに『マーメイド』が披露された頃には、メインボーカルを担当していた内博貴渋谷すばる錦戸亮は脱退してしまっていた。(しかも大倉君は体調不良で欠席)

 からの、一位に輝きスタジアムで五万人を前に披露される『マーメイド』ですよ!!

 CDにもなってないのに!!

 この結果には、投票開始のタイミングで配信された横山君と村上君による動画『ヨコヒナちゃんねる』で投票の一例として『マーメイド』の曲名が挙がったことが大きく関係している。「CD化されていない曲でもいいんだ!?」という気づきを得られたおかげで、この展開に繋がったのだ。ありがとうヨコヒナ。

 私はようやく「楽しい」という感情だけに満たされて、『マーメイド』をこの目で観ることができた。

 この二十年間、本当にいろいろあった。ありすぎた。

 中学二年生の私に「スタジアムでマーメイドを観られる日が来るぞ」と教えてやりたい気持ちにかられたが、きっとそんな情報を当時の私が聞いたら「えっ、内君とすばる君と亮ちゃんがいない? あと大倉君って誰? 水野君はどこに行ったの? 私が大好きだったⅤ.WESTはどうなったの?」と、とんでもなく大混乱しそうなので、黙っておくことにした。

 そんなことを考えたとき、「もしかしたらタイムマシンで未来を見て、望んでいないショックな未来があったとしても、そこにいる当人は案外楽しく生きているのかもしれないな」なんてことを思った。

 中学二年生の私へ。決してメンバーが減る未来を望んでいたわけではないけど、それでもめちゃくちゃ楽しいです。

 よく、日産公演を観た友人たちが誰一人私に連絡をしてこなかったな、と思った。

 こんなん絶対「マーメイドあるぞ!!」って言いたいやん。

 そんな重大情報をLINEやリプライで私に伝えず黙っていた友人みんなに感謝してもしきれない。おかげさまで、私はまっさらの気持ちで『マーメイド』の感動を味わうことができました。

 私は余裕をこいて友人に貸していた双眼鏡をひったくるように返してもらい、少し覗いたがすぐに「やっぱ全体を観たい!」と突っ返したほど、冷静さを欠いていた。

 その一方で、『マーメイド』というタイトルなのに特効がなぜか火柱なことについて、「さっきまであんなに水使ってたのにここは水とちゃうんやなぁ」ということだけ、冷静に考えていた。

 この衝撃の感動には、さらに続きがある。

 新曲CDの特典として全形態を購入した人を対象に、『踊! SONG』と『レア! SONG』の投票で一位となった各曲のライブ音源が、八月一日から専用アプリで配信されることになっていたのだ。

 二十年もの間CD化されていなかった『マーメイド』が、ガッサガサの音質で聞き込んでいた『マーメイド』が、ようやく高音質で持ち運べるようになったわけである。

「この曲がいいね」と大勢言ったから八月一日はマーメイド音源化記念日!!

(字あまり? 知るか!)

 さて、ようやく『レア! SONG』の話題に移る。

 発表されたランキングのうち、二位に大好きな『夕闇トレイン』が挙がった。投票には入れていなかったものの、頭上に夕焼けが広がるころに聴きたかった一曲だ。

 ここで二位ということは、披露されないのか?

「『夕闇トレイン』やってよぉ~」などと票を入れなかった身分でブツクサ思いつつ、披露された一位は優しい歌詞と声が印象的な『アネモネ』だった。

アネモネ』もいいね! と、すぐ手のひらを返した。本当に優しい曲で、涼しい夏の夜に心地よかった。

 曲が終わるとモニターに、ジャニーズWESTの中間君と桐山君のイラストが映し出される。

 B.A.D.団!

 これはジャニーズWESTが結成されるよりも前の話。関ジャニ∞が戦隊パロディの『エイトレンジャー』というコントを始めたころ、まだB.A.D.というユニット名だった彼らが悪役として登場するのがお馴染みの流れだった。

 デビューしてもなおJr.当時のユニット名で悪役を演じてくれる彼らの背景には、ジャニーズWESTがデビュー会見を開いた、あべのハルカスが見えていた。

 エイトレンジャーのコスチュームで現れたメンバーが『∞レンジャー』と『ER』を披露したあと、Jr.が持って出てきた大きな旗を翻すと、その中からはセーラー服を纏った関ジャニ∞……いや、キャンジャニ∞が登場!

『ER』を披露していたのはレンジャーのヘルメットで顔を隠した関西Jr.だったのだ。

 翌日、ステージ真横の座席からはこそこそと旗の中で入れ替わるキャンジャニちゃんが見えてとてもかわいかった。

 スカートを揺らしつつ『CANDY MY LOVE』を歌い上げ、それぞれ挨拶をして舞台袖に戻っていたキャンジャニちゃんの楽屋映像風の茶番を挟み、次はステージ上にバンドセットが組まれる。バンドコーナーの一発目は『ここに』。

 そして次の曲は村上君のピアノの音で始まった。

 しっとりと演奏する村上君は、課金制アイドルという自称に相応しく、テレビとは違う表情を見せる。

 ところが、このメロディにはてんで馴染みがない。

 ここから知っている曲に繋がって、「わあ!」という瞬間を演出するためなのだろう。

 私はある曲を想定して、その瞬間を待っていた。

 その曲とは、関ジャニ∞がJr.の頃から歌ってきた『Eden』だ。

 実は、ネタバレを避け続けていた私は一度だけツイッターのトレンド画面を開いてしまったことがあった。その一位に『Eden』と表示されていたのだ。

 友人にも「『Eden』だけネタバレ踏んだよ」と伝えていた。

 十八周年を祝う祭りなのだから、懐かしい曲も当然あるだろうと思っていたし、『Eden』ならあっても不思議ではないと納得していた。

 そして次の曲が始まる。

 左、メイン、右と全てのモニターを使ってバカデカフォントでドカンと表示された曲タイトルは、

 夕闇トレイン

 だった。

『夕闇トレイン』!!

 てっきり投票二位でセトリ落ちしてしまったのだと思っていた私の気持ちは、まさにモニターいっぱいのバカデカフォントと同じだった。

 同時に「『Eden』は?」と思ったが、結局このライブで披露されることはなかった。

 終演後、友人に訊くと、違う界隈のトレンドの可能性があると教えてくれた。私のネタバレ踏んだよ発言に対して友人はずっと「ないんだよな……」と思っていたらしい。

 夕闇の下で聴く『夕闇トレイン』は格別だった。十八時開演だった日産公演と比べてまだぎりぎり日の出ている時間に披露されたことで、長居公演では見事に夕暮れの時間帯と一致したらしい。

 最上段から見る広々とした薄オレンジ色の夕焼けも、翌日にもう少し下の席から見上げたピンクがかった空も、とても綺麗だった。普段の生活の中で美しい夕暮れを見上げるとき、『夕闇トレイン』を聴きたくなる瞬間の、まさにそんな色だった。

 次の曲は『BJ』で、こちらも夕焼けの似合う曲。それを表す言葉は出てこないし歌われている時間帯は「夜」だけれど、なぜかこの曲にはオレンジ色のイメージを持っている。スタジアムで聴いたのも、ちょうど空がイメージと同じ色の頃合いだった。

 暗くなってきた頃に『イエローパンジーストリート』で優しい時間を締めくくる。翌日はここで『ローリング・コースター』が奏でられた。

 そのあとは怒涛の盛り上がりタイム。『ズッコケ男道』『勝手に仕上がれ』『喝采』を、歓声こそ出せないが拳を突き上げて楽しんだ。

 最後の挨拶は、横山君の言葉が特に印象的だった。

「せっかく同じ時代に生まれたんだから、これからも思い出を作っていこう」といったニュアンスの話をしていて、私は最近読んだ漫画『チ。』のことを思い出していた。

 少し話が逸れるが、『チ。』は魚豊さんの漫画であり、天動説が唱えられていた時代に地動説を信じた人々の物語だ。

 ネタバレを避けたい方は次の段落を読み飛ばしてほしい。

 その最終巻で、地動説を信じて異端だと迫害されてきた側の人間が「同じ思想に生まれるよりも、同じ時代に生まれることのほうがよっぽど近いと思う」「今、たまたまここに生きた全員は、たとえ殺し合う程憎んでも、同じ時代を作った仲間な気がする」というセリフを口にする。

 これよりもう少し前から長いセリフが続いているのだが、私はこの場面を読む前と後では、なんとなく「時代」の感じ方が変わったように思う。

 読む前までは、「美しいことを言うなぁ」と感じるくらいだったのが、今では実感をもって「確かにな」と思うようになったのだ。

 横山君の言葉でも、同じことを思った。確かにな。現在たまたま同じ時代で同じ国にいて、好きになってここへ来てこんなに楽しいんだから、すごいことだよな、と。

 だって、このスタジアムの外側では、いま私たちが浸っている楽しさを知らない人々が至るところにいて、各々の生活を送っている。

 翌日のMCで西日に照らされる範囲が狭くなった客席を見ながら、安田君が「地球って回ってるから」と発した一言でも、メンバーが「Sexy Zoneも言ってたよな!」と盛り上がる中、私は『チ。』のことを思い出していた。

 徐々に沈んでゆく太陽と色彩を変える空を見ながら、「本当に地球は回っていて、それを証明した人たちがいて、天動説と地動説で敵対していても彼らは十五世紀の人々で、私たちは関ジャニ∞とともに令和にいるんだなぁ」と思っていた。ライブに集中せえ。

 本編最後の曲は花火がモチーフとなった『青春FIREWORKS』で、これは予想通り。

 浴衣で現れたメンバーが歌う中、メインステージの上に花火が上がった。

 上がって、上がり続けた。

 多いな、と思っていたら、今度は背後でいくつもの破裂音が鳴っている。

 振り返ったが最後尾の背後はシートだか壁だかが立ちふさがっていて、花火が上がっているであろう空は見えない。音だけが何発も聞こえていた。

 翌日違う席からようやく見られたのだが、その場所では色とりどりの大輪の花火が打ち上げられていた。

 花火大会の中止が相次いでいた二年間だったので、久しぶりに花火を見られて嬉しかった。

 一度ステージを去った関ジャニ∞が、アンコールでまた現れる。

 ここからは『∞SAKAおばちゃんROCK』『好きやねん、大阪。』『モンじゃい・ビート』『関風ファイティング』『イッツマイソウル』『急☆上☆Show!!』と、怒涛のメドレーが続く。最後の最後にみんなで踊る曲が続き、大忙し。

 しっとりと『All is well』が歌い上げられ、村上君の気持ちよさそうな伸びやかな歌声に、自然と拍手喝采が沸き起こった。

 情感たっぷりなバラードの余韻も束の間。

 最後に白い派手な衣装が舞台上に現れた。『関ジャニ∞ on the STAGE』だ。

 ヒャダイン氏作詞作曲のこの歌は、関ジャニ∞のライブあるあるをギュッと詰め込んだハチャメチャな一曲。ポップアップで登場し、MCあるあるも盛り込み、フライング、和太鼓、マジック、ファンサタイム、バンドの演出、炎の特効、ダンス、銀テープまで、関ジャニ∞のライブの流れが凝縮されている。

 そんな関ジャニ∞らしい曲で締めくくり、18祭は幕を閉じた。

 ……と思ったら、まだ祭りは終わっていなかった。

 オーラスとなった翌日。

 この曲のあとモニターに映像が映し出され、冬には東京・大阪・名古屋・福岡を巡るドームツアーが発表された。

 会場を出てネットを見てみると、すでにキービジュアルが公開されていた。

 冬のツアー告知だというのに、打ち上げ花火の背景を引っ提げて派手な柄シャツを着た関ジャニ∞の周りには、浮き輪、スイカ、ヤシの木などが散りばめられている。

 季節感が完全にゼロ!

 そんなハチャメチャな関ジャニ∞の画像を見ながら、この令和四年の冬もまた彼らと過ごすのだと、楽しみで待ちきれない気持ちになったのだった。